個人ではなく法人などが借主となる場合は事業用借地権契約という独特の契約形態が存在する。
事業用借地権契約の場合は、通常の個人間の契約よりも期間が短い点が大きな特徴となる。
これら様々な条件の中から、貸主、借主双方がベストとなる契約形態を検討することが重要である。
☆個人と法人の性質の違い
事業用借地権契約では、一般の借地権契約と比較して契約期間が非常に短く設定されるのが通常である。
この短期間契約を用いる理由は、事業主は通常の場合、短期間で投資資金を回収する事が出来ると判断される為。
また、個人間契約などと違い、事業主は契約期間的に保護を受けることもない。
このような経緯から事業用借地権においては契約期間が短く設定されるのが通常となっているのである。
尚、事業用借地権のような定期借地権は大きく3つの契約形態が存在する。
以下に3点のポイントを比較しやすいように要約しておくのでチェックしておこう。
【一般定期借地権】
●契約期間 ⇒ 50年以上
●目的 ⇒ 制限なし
●契約方式 ⇒ 公正証書
●契約の更新 ⇒ 可能
●返還条件 ⇒ 更地
【建物譲渡特約付き借地権】
●契約期間 ⇒ 30年以上
●目的 ⇒ 制限なし
●契約方式 ⇒ 定めなし
●契約の更新 ⇒ 可能
●返還条件 ⇒ 建物を地主に譲渡
【事業用借地権】
●契約期間 ⇒ 10年以上20年以下
●目的 ⇒ 事業用のみ
●契約方式 ⇒ 公正証書
●契約の更新 ⇒ 不可
●返還条件 ⇒ 更地
事業用借地権が大きく普及しつつある近年、そのメリットについて確認しておこう。
まず、事業用借地権を利用する最大のメリットは、土地価格の下落などによるリスクヘッチが可能となる点があげられる。
企業会計上、建物部分は減価償却資産として経費計上が可能であるが、土地は経費として計上する事が出来ない事から、税引き後の利益から費用を捻出する形となる。
これは、内部留保としての
●現金資産⇒不動産資産
と名目が変わるだけで、同じ資産には変わりない。
しかし、土地は相場によって大きく価値が上昇することもあるが、当然価値が大きく下落する事もある。
土地の下落は、企業の資産が直接目減りする事に繋がるので、土地の保有は大きなリスクも伴うのである。
この点から、土地を保有しない借地権契約は大きなメリットがあると言える。
しかし、土地が大きく値上がりするケースでは、土地を保有する方がメリットが高いのは言うまでもない。
事業用借地権は、近年大きく市場へ普及しているのは事実である。
事業用借地権契約が普及した背景には、幾つかの要因があるが主に
●土地の下落が続いた問題
●定期借地権契約の登場
の2点が大きな要因を占めていると思われる。
前者の土地の下落により損失をこうむった企業の代表をあげると、大手ダイエー(現ソフトバンクダイエー)があげられる。
旧ダイエーは、店舗の大半の土地を所有権として資産保有していたが、土地の下落に伴い資産が大きく減少し経営がいきづまり民事再生手続きに至ったのはあまりにも有名な話である。
同時期、誰もが知っているであろう紳士服の大手メーカーは大型店舗の多くを事業用借地権で展開していたため、土地の資産価値の目減りの影響を受けずに強い基盤を今も尚維持することに成功している。
このような経緯から、土地を資産として積極的に保有する企業が減少したのが借地権が普及した大きな要因とも言える。
土地が右肩上がりになったと言われる地域もあるようだが、これは一部の都心部に限った話。
日本全国の平均的な地域ではこの傾向は変わりないと考えても良いだろう。
また、後者の定期借地権の登場が貸主に積極性を与えた点も大きな要因と考えられる。
期間内契約という大きなメリットが土地を眠らせていた個人資産家の土地の市場への流通を促した点も見逃せない点と言えるだろう。